日本の融資による複数の石炭火力発電所事業が、現在ベトナムとアジアで進行している。バンフォン1石炭火力発電所事業は、これらの事業の汚染度の高さがよくわかる典型的な例だ。
最近融資が承認された同事業は、日本では建設できないレベルの汚染をもたらす技術を使用する予定である。これは周辺地域で暮らす人々にとって何を意味するのか? 国際環境NGOグリーンピースの国際大気汚染ユニットは本日、同事業の健康影響に関する報告書を発表し、その答えを明らかにした。
汚染度が高い旧式技術
住友商事が出資するバンフォン1石炭火力発電所事業は汚染度が高い旧式技術を使用する予定であり、日本、韓国、中国の平均的な新規石炭火力発電所よりも最大で9倍もの汚染物質を発生させる。
この汚染物質の排出はベトナムの人々にとって何を意味するのか? 報告書は、同事業計画の大気質、毒性および健康影響の詳細な分析を行い、以下の内容を明らかにした。
#1: 排出量の増加は有毒粒子と二酸化窒素(NO2)のレベルを上昇させ、成人の脳卒中、肺がん、心臓病および呼吸器疾患、さらに子どもの呼吸器感染症の危険性を高め、その結果、早期死亡を招く。バンフォン1石炭火力発電所事業からの排出は、PM 2.5および二酸化窒素への曝露による年間約60人の早期死亡をもたらす可能性が高い。設備稼働期間30年間では、約1900人の早期死亡が予測されます。
#2: 調査対象の発電所からの排出によって、推定1万人が世界保健機関が定める限度を超える濃度の二酸化硫黄(SO2)にさらされることになる。この曝露は、特に子ども、高齢者およびすでに呼吸器疾患を患う人々などの脆弱な立場にある人々にとって、急性呼吸器症状を引き起こす重大な危険性がある。
#3: バンフォン1石炭火力発電所事業からの排出は酸性雨を引き起こし、作物や土壌に影響を与え、ヒ素、ニッケル、クロム、鉛、水銀などの有毒な重金属の降下物も発生させる。同事業からの排出により、年間で合計約15kgの水銀が地上に堆積すると予測される。堆積が予測される地域の37%は農地であり、稲作がメチル水銀を吸収する可能性があるため重大な危険性である。
強制移転
地元住民らは、冷却水の放出による近隣のバンフォン湾の魚への影響と石炭灰の緩和について心配していると、ベトナムのコミュニティ組織に伝えている。発電所の予定地に住んでいた住民らは移転させられたが、農民や近海の漁民の代替生計手段はほとんど考えられていないと、これらの組織は報告している。
AFP通信によると、石炭火力発電所建設のためにベトナム当局は99歳のカさんを立ち退かせ、家屋を取り壊した。当局が提供した土地は農業に適さないため、カさんは立ち退きを拒否している。
誰が事業に資金を提供しているのか?
国際協力銀行、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)、三井住友銀行(SMBC)、みずほフィナンシャルグループ、三井住友信託銀行(SMTB)、DBS銀行、OCBCが、2019年4月19日に同事業の融資契約を締結している。
汚染度の高いバンフォン1石炭火力発電所事業に融資する住友商事と銀行らは、前述の健康影響に対して責任があり、責任を負わなければならない。