
個別事業
日本政府やメガバンク、事業者は世界中の化石燃料事業に多額のリソースを注ぎ込んできました。いくつかの事業は、特に大きな懸念や問題点を抱えています。いずれも世界で繰り返される、搾取と被害の構造を象徴するものです。
LNGカナダ事業は、ブリティッシュ・コロンビア州モントニーで採掘するシェールガスを、670キロメートルに及ぶコースタル・ガスリンク・パイプラインでキティマットまで運んで液化する事業です。 先住民族ウェットスウェテン族(Wet’suwet’en)は、LNGカナダ事業に関連するコースタル・ガスリンク・パイプライン建設に反対の声をあげ続けてきました。
コースタル・ガスリンク・パイプライン事業では、気候への悪影響に加え、先住民族に対する深刻な人権侵害が報告されています。
2021年、JBICはLNGカナダ事業に対して8億5,000万ドルの融資を承認しました。また、日本のメガバンク(みずほ、MUFG、SMBC)による融資や三菱商事による直接投資が、コースタル・ガスリンク・パイプラインの建設を可能にしました。しかし、JBICによるこの事業への融資決定は、国際法と同行自身の環境・社会配慮ガイドラインに違反するものです。同ガイドラインは、融資に先立って先住民族の自由意思による、事前の十分な情報に基づく同意(FPIC)を得ることを求めています。

バングラデシュのモヘシュカリ・マタバリ統合的インフラ開発イニシアティブ(MIDI)
地域社会やNGOからの激しい反対を受け、日本政府はバングラデシュのマタバリ2石炭火力発電事業への資金提供から撤退しました。しかし、JICAが支援するマタバリ1事業は2024年より稼働しており、これにより2,000人以上の川漁業者が生計手段を奪われています。
出力1,200MWのマタバリ1事業は、JICAと昨年退陣に追い込まれたハシナ前首相の政権下のバングラデシュ政府が進めてきた大規模な協力枠組み、モヘシュカリ・マタバリ統合的インフラ開発イニシアティブ(MIDI)の一部です。この協力枠組みには、複数の化石燃料火力発電所や深海港インフラの整備も含まれています。
マタバリ1の開発により、数百世帯の家族が立ち退きを強いられ、周辺海域が汚染されてエビ養殖や塩田が壊滅し、地域住民が仕事を失いました。また、建設により河川を船が通れなくなり、河岸のマングローブ林も破壊されました。
JICAは、この石炭火力発電所に対して40億ドル以上の融資を行っていますが、同事業は汚職の疑いで捜査の対象となっています。また日本政府は、マタバリ深海港の建設に3億6,300万ドルを投じています。しかし、この事業はすでに深刻な気候変動の影響に直面している国で、気候変動の最大の要因である化石燃料の拡大につながる枠組みの一部であるにもかかわらず、日本政府はこれを気候変動適応のための資金と位置付けています。
さらにJICAは、バングラデシュに対し、13GW規模のLNG火力発電増設の開発を始めるよう働きかけています。バングラデシュが価格変動の大きいLNG市場に依存することになれば、財政的に苦境にある同国にさらなる財政的負担を強いることになります。

フリーポートLNGターミナル
テキサス州のフリーポート LNG事業は、LNG開発事業者がいかに地域社会の安全や住民の生活よりも利益を優先するかを示す、典型的な事例です。2022年には大規模な爆発が発生し、炎が約137mの高さまで上がりました。この事故では周辺の人々が負傷し、メタン、一酸化炭素、ベンゼンなどの極めて危険な化学物質が約3,400m³放出されました。これにより、この施設は8か月間稼働停止となり、この事業で契約していた企業に大きな損失をもたらしました。その後も運営上の問題に苦しめられています。
この事業は、国際協力銀行(JBIC)から26億ドルの融資を受け、日本貿易保険(NEXI)からは11億5,000万ドルの保証が提供されています。さらに、日本の電力会社やメガバンクもこのプロジェクトに資金を提供しています。
フリーポートの住民は不釣り合いなほど高い疾病率と深刻な健康問題に直面しており、この地域の大気質はアメリカ肺協会(American Lung Association)から継続して「F」と評価されています。
フリーポート LNGの問題は、決して個別の事例ではありません。わずか約320km離れたルイジアナ州では、日本が出資するキャメロンLNGターミナルがあり、輸出の開始以降67件もの有毒ガスの「漏出」が発生しています。また、日本の銀行はアメリカのLNG事業に431億ドルを投じており、これはアメリカの金融機関全体による米LNG事業への支援総額を上回り、アメリカLNGの最大の資金提供者となっています。さらに、日本貿易保険(NEXI)はキャメロンLNGターミナルの拡張への資金支援を検討しています。