2023年12月18日(東京)- 岸田総理大臣は今日、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の首脳ら、およびオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相と、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の首脳共同声明を発表しました。
AZEC初の首脳サミットは、12月16-18日に東京都内で開催された日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議の最終日に開催されました。
発表された声明に対して、市民団体は、「カーボンニュートラル/ネット・ゼロ排出への多様かつ現実的な道筋」やガス、水素、アンモニア、バイオマス、原子力の必要性を認める内容であり、アジアにおける化石燃料の利用をグリーンウォッシュ(環境に配慮しているよう見せかけ)していると非難しました。
2022年1月に発表されて以来、岸田内閣は、GX戦略の一環であるAZECを推進しています。
日本はAZECパートナー国に対し、再生可能エネルギー、水素、アンモニア、二酸化炭素回収・貯留(CCS)を含むエネルギー事業に対し、2030年までに最大80億米ドルを充てると約束しています。さらに、経済産業省によると、今年3月に開催されたAZEC閣僚会議から本サミットまでの間に、日本とAZEC諸国は、再生可能エネルギー、LNG、CCS、水素・アンモニア・バイオマスの混焼に関する覚書を含む、約70の覚書に署名しています。
しかし、アジアの脱炭素化を謳うAZECは、実際は、LNGや他の化石燃料に基づいた技術への依存を助長し、アジア地域の気候変動対策の目標と整合していないという批判もあります。先週までドバイで開催されたCOP28では、日本政府は化石燃料の利用延長を推進していると、皮肉を込めた不名誉な「化石賞」を市民団体から贈られました。
アジア全域(バングラデシュ、インド、インドネシア、日本、フィリピン)及びオーストラリア、米国の市民団体はサミットに向けて15のアクション(抗議行動)を行い、ASEAN諸国の首脳に対して、アジア地域における日本の汚いエネルギー計画を拒否すること、また日本に対しては、支援対象を化石燃料から風力や太陽光などの再生可能エネルギーへ方針転換することを要求しました。
また、これらの団体は、アジア地域および世界中で日本の化石燃料関連投融資による影響に苦しんでいるコミュニティと連帯してアクションを行いました。
市民社会のステートメント:
Asian People’s Movement on Debt and Development(APMDD)、コーディネーター、リディ―・ナクピル
グローバルサウスのコミュニティは、石炭、ガス、石油事業が及ぼす影響に長年苦しんできました。事業地のコミュニティは病気、移転、生計手段の喪失に苦しんでいます。現地の生態系も破壊されています。そして今、化石燃料の利用によって大気中に蓄積された過剰な温室効果ガスが原因で、人々は気候変動による壊滅的な影響を経験しています。 私たちは、化石ガス、水素、アンモニア、二酸化炭素回収・貯留(CCS)プラントなど、日本政府と日本企業が推進する誤った気候変動対策によって、化石燃料の無い未来への機会が失われるようなことを決して許しません。私たちは、すべての誤った気候変動対策と化石ガスの拡大に抵抗します。日本は利益追求よりも、人々と地球のニーズを優先すべきです。
WALHI/インドネシア環境フォーラム(FoEインドネシア)の鉱山・エネルギー問題担当キャンペーナー、レレ・クリスタント
インドネシアにおける化石燃料の使用による損失については、すでに多くの証拠があります。石炭火力発電所による大気汚染で数十万人が死亡し、この被害による損失は2,100億米ドルに達する可能性があると報告されており、2ヘクタールの熱帯雨林が炭鉱のために伐採され、数百ヘクタールの住宅地がガスの掘削作業によって泥に沈んでいます。私たちは、水素、アンモニア、バイオマスを使った混焼や二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCS/CCUS)、LNGの利用を通じて化石燃料の利用を拡大しようとする日本の取り組みの遊び場となることを拒否します。
Center for Energy, Ecology, and Development(CEED)、事務局長、ジェリー・アランセス
日本は、東南アジアにおけるガスとLNGブームの最大の支援国であり、この地域をさらに何十年も化石燃料に依存させる「危険な目くらまし」と言われる化石燃料に基づく技術の最大の推進国です。東南アジアはすでに再生可能エネルギーへの転換期を迎えており、1.5 ℃目標に沿ったエネルギー転換への道を示す大規模な再生可能エネルギーの計画があります。しかし、日本は化石燃料に基づくエネルギーを維持することに固執し、脆弱な立場にある私たちのような国の最善の利益をあからさまに無視しています。私たちは、気候変動による大災害へと更に引きずり込まれています。日本とASEANは友好50周年を記念して、この会合を開催し、AZEC声明を発表したとのことですが、私たちの気候の墓穴を掘ってくれるとは、日本はなんて友好的なんでしょう。
FoE Japan、キャンペーナー、長田大輝
アジア・ゼロエミッション共同体の実態は、日本による化石燃料ガスや水素・アンモニア混焼、CCSといった誤った気候変動対策の推進に過ぎません。これは、再生可能エネルギーのポテンシャルが豊富な東南アジアに、全く不必要な化石燃料インフラを縛りつけようという試み以外の何ものでもありません。利益は日本の化石燃料関連企業にもたらされ、地域社会や環境には損害を与えるだけです。日本は、今世紀最大のグリーンウォッシュを止め、地域に根ざした再生可能エネルギーへの移行を支援すべきです。
Trend Asia、エネルギー・キャンペーナー、ノビタ・インドリ
日本ASEAN首脳サミットは、誤った気候変動対策をエネルギー移行の一環として推進するための舞台に過ぎず、脱炭素化と気候変動に関する世界的な公約の達成に向けた努力を台無しにするものです。インドネシアは、AZECの共同発起国として、混焼技術のような誤った気候変動対策がエネルギー移行策に含まれないようにし、各国がガスを含む化石燃料から完全に脱却することを徹底すべきでした。インドネシアはその役割を果たさず、逆の行動を取りました。このサミットとAZECの開始の結果、アジア地域は世界の気温上昇を加速させ、気候危機を悪化させ、パリ協定の目標が達成できない懸念があります。
Oil Change International、シニア・パートナーシップ・アウトリーチ・オフィサー、ヒクマット・ソエリアタヌウィヤヤ
日本の誤った気候変動対策は、私たちが享受すべき公正で公平なエネルギー移行をハイジャックしている詭計に過ぎません。日本は、ゼロエミッションに向けた対策として化石燃料に基づいた技術を推進していますが、アンモニアや水素による混焼、CCSやCCUS、LNGの拡大などを含むこれらの技術は、排出削減に貢献しません。これらの技術は、気候危機を悪化させ、アジア諸国に財政負担を強いることになります。アジア諸国の首脳らは、企業利益より人々の暮らしと地球を優先し、日本が提供する「危険な目くらまし」と言われている化石燃料に基づく技術を拒否すべきです。
メコン・ウォッチ、政策担当、遠藤諭子
日本が推進する誤った気候変動対策のために、カーボンバジェットが消失するとしたら非常に悔やまれます。AZECが本日発表した共同声明の構想は、日本の古いマインドセットと、化石燃料に依拠し1.5℃目標と整合しないビジネスモデルを温存する技術を基盤にしているものです。危険で高コストの原子力発電を、福島の事故処理をどうすべきかまだ見つけることができていない日本が推進するのも論外です。ASEAN地域には太陽光および風力の高いポテンシャルがあります。このポテンシャルを最大限引き出す努力をなぜ今もっと打ち出さないのでしょうか。私たちは日本が真にクリーンで持続可能な方法で貢献する姿を見たいです。日本は自国はもちろんのこと、ASEAN諸国に、行き先違いの道筋を強いるのではなく1.5℃目標に到達する道筋を歩んでもらうべきです。
Jubilee Australia、クライメート・ジャスティス・キャンペーナー、ジェームス・シャーリー
アルバニージー政権は、化石燃料の拡散と拡大を助長してきた実績があります。脱炭素化の名目の下AZECサミットへ賛同するのも同政権のやり方の一環であり、気候危機がもたらす経済的、環境的、人道的課題に対処できていません。このサミットの成果は、自らの生存のための資金を調達できない化石燃料産業と、オーストラリアで社会的免許が皆無である原子力産業に対して、さらなる援護を提供したことです。オーストラリア全域のコミュニティが、深刻化する洪水、山火事、サイクロン、海面上昇の影響によって壊滅的な打撃を受けているにもかかわらず、この援護提供を地域パートナーへの配慮として糊塗するのは、悲しいことに、日常茶飯事となっています。人と地球を死に至らしめている瀕死の産業に未来を結びつけても大成できないという理解の下、世界中の国々が21世紀に繁栄するために経済の舵を切っています。新しいエネルギー・インフラを構築している国々は、より安価でクリーンなエネルギーを利用できるユニークな立場にあります。アルバニージー政権は、この分野で信頼できる貿易相手国であると自負していますが、世界が1.5℃に直面する中、壊れかけて、失敗し、危険な化石燃料産業を擁護し続け、なぜこれが理にかなっているか説明するのに苦しんでいます。
Don’t Gas Indonesia、リサーチ・リード、シギット・カルヤディ・ブディオノ
この取組は、各地で起きている社会・生態系の激甚災害を止めるために必要とされ科学的に認知されている、化石燃料の緊急の全面的フェーズアウトと整合していません。AZECはその資金支援のほとんどが民間貸付の形で行なわれるため、インドネシアを更なる債務に陥れ、誤った気候変動対策の拡大を許し、気温上昇を1.5℃までに制限する必要性と矛盾します。
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関連リンク:
- アクションの写真
- 日本ASEAN50周年記念サミットに対するFossil Free Japanキャンペーンサイト
- 公開書簡:脱化石燃料を実現する輝ける機会を日本は逃してはならない
- フィリピン国会議員による論説:Japan’s green aid is more about money than climate
- インドネシア市民社会団体から日本政府に要請書提出:「インドネシアでの化石燃料の延命と環境・生活破壊は直ちに止めて―公正かつ公平なエネルギー移行に地域コミュニティと市民社会の意味ある参加を」
- 報告書:Report: Confronting a Fossil Future: Stopping the Gas Detour in Renewable-Rich Southeast Asia
連絡先:
芝田朋美 – tomomi@priceofoil.org