今年5月、テキサス州フリーポートの住民代表団は、自分たちの町で行われている危険な液化天然ガス(LNG)輸出事業への資金提供について、日本の投融資者にその責任を追及するため東京を訪れた。
日本は、LNG事業への世界最大級の資金提供国である。フィリピンやテキサスを含め世界の各地で、こうした事業は有害な汚染を広げ、地元の漁業経済を壊滅させ、気候危機に拍車をかけている。日本は、自国で使用するエネルギーを確保するため ―― そしてアジアの他国へガスを転売して巨額の利益を得るために、これらの事業に資金提供をしている。
日本はフリーポートLNG事業を支援するために、37億米ドルの公的資金を投じた。フリーポート・ヘイブン・プロジェクトの創設者であるマニング・ローラーソンJr. 3世氏、クライメート・カンバセーション・ブラゾリア・カウンティの創設者グウェンドリン・ジョーンズ氏、ベター・ブラゾリアの創設者メラニー・オルダム氏は、フリーポートLNG事業の有害な影響について日本の大手企業および政府機関に伝え、メキシコ湾岸南部および世界中のLNG事業への資金提供を停止するよう要請するため、東京を訪れた。(フリーポートはブラゾリア郡に位置している)。
東京滞在中、ローラーソン氏、ジョーンズ氏、オルダム氏の3人は、公的機関である国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)、民間銀行の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほ銀行、三井住友銀行(SMBC)、電力会社のJERAと、この事業の資金提供に関わる日本の金融機関や民間企業に対し、一連の異議申立書を提出した。
「日本の金融機関は、フリーポートLNG事業が地域社会や住民、環境、そして金融機関自身にとっても多大なリスクを伴うことを理解する必要がある。私たちは、彼らがその事実からこれ以上目を背けられないようにするために東京に来たのだ」とジョーンズ氏は語る。
フリーポートの住民代表団は、JBIC、NEXI、経済産業省(METI)、財務省(MoF)の代表者と面会し、日本の金融機関が資金提供している危険で有毒なガス産業の影響に脅かされて生活してきた経験を伝えた。彼らは資金提供者に対し、フリーポートLNG事業への資金提供を中止し、同事業の拡張への投融資を拒否し、彼らが提出した申立書に記録された違反行為を調査するよう訴えた。
フリーポートは人口約1万3,000人の小さな町で、住民の多くは低所得者や有色人種のコミュニティである。また、ブラゾリア郡の大気質は、米国肺協会から一貫して「F」評価を受けている。「私たちは犠牲になるコミュニティ(として扱われている)」とオルダム氏は話す。フリーポートLNGのような事業の「リスクをすべて負わされ、利益は一切得られない」
オルダム氏や地域住民代表は、家族や近隣住民がぜん息やがん、その他の疾患を発症するのを目の当たりにしてきた。研究によれば、こうした健康被害はLNG輸出事業やその他の産業施設による汚染と関連している。
「フリーポートLNG事業は、私が暮らす地域の人々を苦しめている」とローラーソン氏は話す。
ローラーソン氏、オルダム氏、ジョーンズ氏は、2022年にフリーポートLNG輸出基地で爆発事故が起きた際、火の玉が140メートル上空まで吹き上がるのを目撃した。 この爆発により、付近にいた人々が負傷し、3,300立方メートル以上のLNGが放出された。「輸出基地で爆発事故が起きた日を、決して忘れることはないだろう。あの施設に対する見方、そして家族や地域住民の安全に対する私の考えが変わってしまった」とグウェンドリン・ジョーンズ氏は語る。「誰も、そんな恐怖を抱えて生きるべきではない」
フリーポートLNG事業の問題は決してまれな事例ではない。LNGターミナル近隣の地域社会では、有害な汚染物質への曝露が日常茶飯事だ。さらに、LNG輸出基地は気候危機をさらに悪化させる。オイル・チェンジ・インターナショナルとグリーンピースが発表した報告書によると、米国のLNG輸出基地へのさらなる投資は、住み続けられる気候の維持と両立しないことが明らかになった。
今回の東京訪問により、フリーポートのコミュニティが長年抱えてきた懸念が日本の国会の場でも取り上げられた。ローラーソン氏、オルダム氏、ジョーンズ氏は、国際環境NGOのFoE Japanと共に日本の国会議員と面談し、フリーポートで今起きている危機について直接説明し、これを政府の公式な場で取り上げるよう要請した。
大島九州男参議院議員は財政金融委員会で発言し、住民が負傷し、大気を汚染し、多くの排出基準違反を繰り返している事業に、なぜ日本の公的資金が流れているのかと疑問を呈した。さらに、「現地で実際に何が起きているのかを見極めなければならない」と述べた。
別の機会には、岩渕友参議院議員が参議院決算委員会でフリーポート問題について発言し、JBICとNEXIに対し、フリーポートの住民に対する被害を調査し、同事業への支援を停止するよう求めた。世界の潮流に逆行しているLNGの新規事業開発はやめるべきだ、と岩渕氏は述べた。
東京訪問中の異議申立書の提出は、より広範な説明責任の追求に向けた第一歩であった。 6月26日、Asian Peoples’ Movement on Debt and Development(債務と開発に関するアジアの民衆運動)ほか複数の団体は、日本の資金提供者がフリーポートLNGおよびすべてのガス事業への資金提供を停止するよう求める、約2,000人の署名入り請願書を提出した。この請願書は、東京で開催された各銀行の年次総会に合わせて、マニラにあるMUFG、みずほ、SMBCそれぞれの支店に提出され、これらの金融機関に対し、その有害な融資慣行に対する反対の声が高まっていることをはっきりと認識するよう求めた。
また、各団体はフィリピンの金融街であるマカティ市で抗議行動を行い、今回の行動は、民間の大手企業だけでなく、アジアにおける化石燃料の拡大を引き続き支援しているJBICや国際協力機構(JICA)といった日本の公的機関をも対象としたキャンペーンの始まりに過ぎない、と警告した。
フリーポートの住民代表は、日本の資金提供者が投融資によって引き起こした被害について責任を問うため、あらゆる救済措置を求め続ける。
「私は東京に来て、日本の金融機関に、米国のLNG事業への投資は『悪魔との取引』のようなものだと伝えた。それは不安定で、リスクが高く、信頼できないものだ。日本の金融機関は、自社が資金提供している事業によって被害を受けている人々の声に耳を傾け、私たちの地域社会に犠牲を強いるのを止めるべきだ」とローラーソン氏は語る。
日本の資金提供者は、自らの投資決定によって最も大きな影響を受けている人々の証言をすでに耳にしている。フリーポートLNGがいかに有害であるかを詳述した住民代表からの申し立ては、「対応待ち」の状態である。今、資金提供者には選択の余地がある。フリーポートLNGが地域社会、気候、そして自らのポートフォリオに及ぼすリスクについて調査を開始し、 有害なLNG事業への資金提供を停止することを決断するか ―― あるいは、生態系を破壊し続け、気候危機を悪化させ、人々が清浄な空気と水を得る権利を侵害し続けるかだ。