ブンアン 2 石炭火力発電事業(ブンアン 2 )はベトナムのハティン省に計画されている1,200MW(600MW×2 基)規模の石炭火力発電所。財務や評判リスクに繋がる環境や人権の様々な問題点があるにも関わらず、現在三菱 UFJ 銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、また、国際協力銀行が同事業への融資を見込んでいる。
ベトナム・ブンアン 2 石炭火力発電事業は環境災害、投資側財政難に繋がる。この石炭火力発電所が建設されるべきではない理由は次の5点である。
- 大規模な海洋汚染を起こしたフォルモサ製鉄工場、また既存のブンアン 1 石炭火力発電所に隣接した場所に建設が予定されている。
- 事業による大気汚染物質の予測排出値が日本や韓国の水準に比べ5~10倍高い(注1)。
- ベトナムで再生可能エネルギー(太陽光や風力)が石炭火力よりすでに安価になっているのにも関わらず、新設が予定されている。
- 事業が1億5,800万ドル(約170億円)の損失になると評価されている。
- ブンアン 2 への融資は石炭火力発電の新規建設へのファイナンスを行わないという日本の銀行の方針の精神に反している。
1.ブンアン2石炭火力発電所は、フォルモサ・ハティン・スチール(FHS)の製鉄工場に隣接した場所に建設される予定です。この製鉄工場はベトナム史上最悪の環境災害 (海洋汚染、そして魚の大量死)を引き起こしたとことで知られています。その上、ブンアン2石炭火力発電所は、大気汚染物質の排出が懸念されているブンアン1石炭火力発電所にも隣接しています。稼働中のブンアン1発電所から排出される石炭灰による近隣住宅地や農地への被害、および大気汚染が問題となっています。
2. ブンアン2石炭火力発電所は、日本で建設されている発電所に比べ大気汚染物質の排出濃度が数倍も高いことが指摘されています。エネルギー・クリーンエア・リサーチセンター(Centre for Research on Energy and Clean Air)の分析によれば、事業による大気汚染物質の予測排出値が日本の水準に比べ5~10倍高いことが判明しています 。
3. 金融シンクタンク Carbon Trackerの報告書によると、ベトナムにおいて、既に新規太陽光発電の方が新規石炭火力発電を建設するよりも安くなっている。2022年には新規太陽光発電の方が既存の石炭火力発電を稼働させるよりも安くなるという結果も出ている。また、ブンアン 2 が建設されるハティン省の政府は省におけるエネルギー・ミックスには石炭火力発電を含まない計画を立てている(注2)。従って、ブンアン2は座礁資産になるリスクがある。
4. 韓国政府系機関 (Korean Development Institute) による予備妥当性評価(注3)が行われ、事業が1億5,800万ドル(約170億円)の損失になると評価された。環境問題や地域住民の反対による事業へ遅延の可能性もあると推定。この評価により、ブンアン2への融資は財務リスクが高いことが明確である。
5. 日本のメガバンク、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループとみずほフィナンシャルグループは石炭火力発電の新規建設へのファイナンスを行わないという方針を示している。さらに、みずほフィナンシャルグループは「2030 年度までに2019 年度比 50%に削減し、2050 年度までに残高ゼロとする」石炭火力発電所向け与信残高削減の目標を持っています。 方針の例外規定により石炭火力発電所に融資を行うことは場合によって可能だが、ブンアン 2への融資は明らかに方針の精神に反することである。
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脚注
注1 The average new coal power plant in Japan and Korea
注2 People’s Committee of Ha Tinh province. “Implementation of the National Energy Development Strategy till 2030, with a vision to 2045 under the Political’s Resolution NO. 55-NQ / TW OF 11/02/2020. (8 May 2020), online:
注3 KDI Pre-feasibility Study for KEPCO’s Vung Ang 2 Project (May 2020) from Congressman SH Kim’s Office.