【NGO共同声明】
日米首脳会談の公的支援2050年までのネットゼロ目標を歓迎
~進行中の石炭火力2案件からの撤退が必要〜
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク
4月16日、ワシントンDCで菅義偉首相およびジョー・バイデン米大統領の初の日米首脳会談が開催され、両国の気候変動方針について「野心、脱炭素化及びクリーンエネルギーに関する日米気候パートナーシップ(※1)」が発表されました。本方針では「日米両国は、公的国際金融を、2050年までの地球規模の温室効果ガス排出実質ゼロ達成及び2020年代の大幅な排出削減に整合的なものとし、官民の資本の流れを、気候変動に整合的な投資に向け、高炭素な投資から離れるよう促進することに取り組む」と述べられています。
両政府が自国のみならず海外への公的資金支援においても2050年までのネットゼロ排出達成と整合的にすること、公的・民間の資金について高炭素な投資から離れるよう促進すると表明したことを歓迎します。しかし、具体的な対象事業やタイムラインは示されておらず、十分な実効性が伴うコミットメントとは言えません。特に国際協力機構(JICA)による支援が想定されているインドネシアのインドラマユ石炭火力発電事業(インドラマユ)およびバングラデシュのマタバリ石炭火力発電事業フェーズ2(マタバリ2)の支援停止を日本政府が表明しないことは、2050年までのネットゼロ排出達成と整合的にするとの目標の実効性を極めて不透明なものにしています。
2020年10月に国際エネルギー機関(IEA)が発表した World Energy Outlook 2020 によれば、既存の化石燃料エネルギーインフラおよび現在建設中のすべての発電所が、その寿命まで過去と同じように使用された場合、それらの排出量は2070年までに世界の平均気温を1.65度上昇させるとのことです(※2)。気候変動対策の国際的な枠組みであるパリ協定の1.5度目標を達成するためには、石炭のみならず石油やガスを含めた化石燃料への公的支援を止めることが必要です。特に、現在進行中のアジア開発銀行(ADB)のエネルギー政策の改訂や経済協力開発機構(OECD)の石炭火力発電セクター了解の改訂にて、他のADB出資国およびOECD加盟国に対して、1.5度目標に整合しない石炭、石油、ガス事業への公的支援を止める方針を策定するよう働きかけることが重要です。
4月22、23日にはバイデン大統領の主催で、各国の首脳が気候変動対策について協議する気候変動サミットが行われます。日本政府は、この機会にインドラマユおよびマタバリ2に対する公的支援を行なわない方針を明確に示すとともに、全ての化石燃料事業への公的支援をやめるための国際的なリーダーシップを発揮するよう求めます。
脚注:
- https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100178078.pdf
- International Energy Agency (IEA), (2020), World Energy Outlook 2020, pp. 102, IEA, Paris, https://www.iea.org/reports/world-energy-outlook-2020/achieving-net-zero-emissions-by-2050.
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本件に関するお問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)プログラムディレクター、田辺有輝
tanabe@jacses.org