クアラルンプール発 ー クアラルンプールで開催される第3回アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)首脳会合において、アジア各地の市民団体は、新しく就任した高市早苗首相に対し、アジアの再生可能エネルギー移行を阻害し、化石燃料の使用を長引かせることを止めるよう強く求めています。
36の市民団体が署名し、10月25日に発出された共同声明では、高市首相とASEAN諸国の首脳に対し、「AZECを化石燃料と企業利権の延命手段ではなく、アジア地域の今後のエネルギー移行を加速させる真のプラットフォームにするための措置を講じるよう」求めています。
2023年3月から2024年10月にかけて、AZECの下で217件の覚書(MoU)が締結されています。このうち67件(約3分の1)は水素、アンモニア、LNGなどの化石燃料技術に関連するものでした。わずか数週間前には壊滅的な台風ブアロイが襲来し、フィリピンとベトナムでは広範囲において破壊と多くの死者が出ましたが、日本は悪化する気候危機にもかかわらず化石燃料の使用を長引かせる行動を継続しています。
10月17日にクアラルンプールで開催されたAZEC閣僚会合においては、マレーシアと日本の機関の間で、二酸化炭素回収・貯留(CCS)、バイオ燃料、トランジション・ファイナンスを含む7件の新たな覚書が署名されました。経済産業省とマレーシア政府は、CCS技術の50年にわたる失敗の歴史にもかかわらず、CCSに関する政府間の覚書に署名しています。今回の首脳会合では、再生可能エネルギーによる真の解決策よりも、高価で未確立の技術を優先する合意がさらに締結されることが予想されます。
アジアの市民社会は共同声明で「AZECは、石炭と化石燃料ガスを段階的に廃止するどころか、石炭火力発電所でのアンモニア混焼、ガス火力発電所での水素混焼、炭素回収・貯留(CCS)など、『危険な目くらまし』となる技術を推進しています。これらの技術では必要とされる規模や速度で排出削減を実現できません。そればかりか、各国を長期的な化石燃料依存に縛りつけ、高額なインフラと債務の負担を強い、同時に再生可能エネルギーへの移行を遅らせます」と警告しました。
マレーシアと日本が共同議長国を務める首脳会合において、市民社会は高市首相に対し、従来の慣行を打破し、日本の豊富な人材・財力と技術的専門知識を、アジアに膨大に潜在する再生可能エネルギーの可能性に振り向けるよう求めています。東南アジアでは再生可能エネルギーの潜在力の99%が未だ未開発であり、同地域は発電容量を33.8 GWから397.8 GWへ拡大する計画です。これは、現在の再生可能エネルギーの容量の約12倍に相当します。
署名団体はまた、ASEAN各国政府と日本の新政権に対し、アジアの再生可能エネルギーへの移行を支援する方向へAZECを導くための行動を取るよう要請しました。
- LNG、アンモニア/水素混焼、バイオマス、炭素回収・貯留(CCS)といった化石燃料に基づく技術への支援を終了すること。
- 公的資金を無償の形で、地域社会に根ざした再生可能エネルギーおよびエネルギー効率化の拡大に振り向けること。
- コミュニティと生態系を尊重し、ASEAN地域が日本の排出した二酸化炭素や時代遅れの技術の受け入れ先として利用されないようにすること。
コメント:
有馬牧子、Oil Change International、シニア・ファイナンス・キャンペーナー
「高市首相は明確な選択を迫られています。化石燃料拡大のためのグリーンウォッシュ手段としてAZECを継続するか、それとも方針転換し、アジアにおける再生可能エネルギーの潜在性の高さを認識することで真のリーダーシップを示すかの選択です。AZEC下の覚書の3分の1は化石燃料を支えるものであり、これは直ちに終了させるべきです。日本にはアジアの再生可能エネルギー移行を支援する資源と責任があり、その出発点は高市首相の政治的意志次第です。」
Amalen Sathananthar、The Artivist Network(マレーシア)、アジア・ディレクター
「プトラハイツでのペトロナス・ガス爆発事故(イード期間中に数百人が負傷)や、南マレーシアのガス火力発電所における最近の停電は、我々マレーシア人にとって警鐘となるべきです。にもかかわらず日本はAZECを通じて、マレーシア及び地域全体でさらなるガスインフラ整備を推進しています。AZECが資金提供する新たなLNGターミナルやパイプライン拡張のたびに、より多くの地域社会が危険に晒されます。日本はエネルギー移行を掲げているが、AZECを通じて提供しているのは、すでに私たちの地域社会に害を及ぼしている化石燃料依存の延長線上に過ぎません。マレーシアが求めるのは日本のガス投資の拡大ではありません。国民にとって公正かつ公平な、安全で再生可能なエネルギーへの支援が必要なのです。」
Dwi Sawung、WALHI(インドネシア)、キャンペーン・マネージャー
「AZECは、公正なエネルギー移行に向けた解決策ではなく、地域コミュニティの権利と環境の持続可能性を無視した新たな形態のエネルギー植民地主義です。私たちは、実際には企業と関連産業の利益がそこにありながら、脱炭素化の取り組みだと装うAZECは構造的なグリーンウォッシングに他ならず、これを拒否します。エネルギー移行は、不公平さや生態系破壊を助長する投資スキームではなく、人々のニーズと権利に根ざしたものであるべきです。」
Muhammad Reza Sahib、Don’t Gas Indonesia 呼びかけ人(インドネシア)
「日本のAZEC政策は、気候危機を解決するのではなく悪化させる誤った気候変動対策を輸出しています。インドネシアではLNGやアンモニア事業が『クリーンエネルギー』と称して売り込まれ、化石燃料依存を固定化し、企業の利益のために地域社会を犠牲にしています。日本は汚染を進歩として偽装するのを止め、正義に基づく、人々を中心にした再生可能エネルギーへの移行を支援すべきです。」
Gerry Arances、Center for Energy, Ecology, and Development(フィリピン)事務局長
「フィリピンでは毎年、激化する台風により、多くの命が失われています。先月の台風ブアロイにより、少なくとも37名の命が奪われました。私たちの悲しみはまだ生々しいのに、日本の残酷な対応は、こうしたスーパー台風を招く化石燃料への依存をさらに強化することです。私たちは、AZECの下、日本が化石燃料の利用を長引かせることを望んでいません。必要なのは再生可能エネルギーへの移行を支援する真のパートナーシップです。」
Lidy Nacpil、Asian Peoples Movement on Debt and Development コーディネーター
「日本は世界最大の公的資金を化石燃料に注ぎ込み、AZECはそれらの利益を東南アジアのニーズよりも優先しています。LNG、CCS、アンモニア混焼は高価で不誠実な妨害であり、アジアに膨大な再エネの可能性が潜在しているにも関わらず、それを未開発のまま化石燃料依存に縛り付けるものです。私たちは再生可能エネルギーの開発のために真のパートナーシップが必要です。日本企業の利益のためだけの資金スキームは要りません。」
James Sherley、Jubilee Australia Research Centre(オーストラリア)、気候正義キャンペーン・スペシャリスト
「COP開催に向けて、オーストラリアと日本は気候変動対策におけるリーダーシップを示すべきであるにもかかわらず、オーストラリアはAZECを通じて日本の有害な化石燃料政策を助長しています。高市首相は、AZECによる化石燃料技術への支援を終了し、日本の支援を再生可能エネルギーへ転換することにより、この流れを打ち切り、アジア地域における真の気候パートナーシップの姿を示すことができます。」
波多江秀枝、FoE Japan、開発と人権キャンペーナー
「脱炭素化やエネルギー移行の名の下に、日本の官民がこれ以上、気候危機対策を遅らせ、現地コミュニティの生活や環境に深刻な被害を及ぼすことは許されません。グリーンウォッシュの枠組みであるAZECを押し付けるのではなく、日本政府は直ちに政策転換を図るべきです。日本がすべきことは、温室効果ガスの歴史的排出に対する自らの責任を認識し、真に化石燃料から脱却するための道筋に沿って、グローバルサウスに対して無償かつ公正な支援を行っていくことです。今こそ、大企業の利益を優先するのではなく、日本はアジアの市民社会とともに、地域コミュニティのニーズと人権に基づくエネルギー移行を実現していく時です。」
編集者向け注記:
- Oil Change International は、日本が2014年以降、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術に対して公的資金52億米ドルを投じてきた実態を示すファクトシートを発表しました。
- Climate Analytics の報告書によると、アジア諸国が今後CCSの多い経路を採用した場合、2050年までに追加で累積約250億トン(CO2換算)の温室効果ガスが排出される可能性を示しています。
- Climate Integrateの分析によると、AZECの覚書の3分の1以上が化石燃料技術を推進しています。
- アジア各地の市民団体が主導した「グローバル・デー・オブ・アクション」の写真はこちらからご覧いただけます。
連絡先:
Weng Cahiles、weng@oilchange.org(英語)
有馬牧子、makiko@oilchange.org(日本語)