8月20日から21日の日程で、第2回アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)閣僚会合がインドネシアで開催されています。AZECは日本が主導する構想ですが、温室効果ガスの排出削減を名目に化石燃料技術を推進しているとの批判が高まっています。「ゼロエミッション」を掲げながら、AZECはアジアにおける再生可能エネルギーへの移行を促進するのではなく、化石燃料への依存を長引かせるための手段であるとの見方が強まっています。
AZEC閣僚会合前日の8月19日、インドネシア環境フォーラム(WALHI/FoEインドネシア)を含むインドネシアの市民団体はジャカルタで記者会見を開き、日本に対し、AZECを通じてアジアのエネルギー移行を遅らせることを止め、その代わりに、迅速で公正かつ公平な脱炭素化およびエネルギー移行に向けた支援をインドネシアの地域コミュニティと市民社会の意味ある参加を確保した形で行うよう求めました。WALHIは、石油、ガス、石炭事業に対する日本の支援を終わらせるために活動している日本および世界の市民団体の連合体、Fossil Free Japanのメンバーです。
国際NGOのオイル・チェンジ・インターナショナルのヒクマット・ソエリアタヌウィヤヤは、「日本政府は、カーボンニュートラルとエネルギー安全保障を達成するためには 『多様な道筋 』が必要だと主張している。しかし、アジアのエネルギー安全保障を確保するために最も確実な道は、再生可能エネルギーの迅速かつ公正な開発である」と述べています。
また昨日、インドネシアの市民団体を代表する専門家たちがWALHI事務所での記者会見でAZECの問題点を指摘し、その模様はネット配信されました。スピーカーは以下の通りです。
- ビマ・ユディスティラ(Celios):債務の罠を含む説明責任と透明性について
- ピウス・ギンティン(AEER):化石燃料ベースの対策について
- シギット・ブディオノ(Don’t Gas Indonesia):誤った対策について
- ウリ・アルタ(WALHI):土地収奪と人権侵害について
記者会見に加え、Fossil Free Japanとその連合パートナーは、第2回AZEC閣僚会合の開催地および各国で以下を含むアクションを行いました。
- インドネシアCSOによる日本・インドネシア両政府への要請書(インドネシア語原文、英訳、和訳)
- ASEAN代表団への書簡
- 豪州AZECへの閣僚代表への書簡
- ジャカルタでの日本大使館前アクション、バンコク及び東京でのフォトアクションの写真
市民団体は、AZECが化石燃料をベースとした技術に焦点を当てているため、それによって気候変動に対して真に取るべき行動を遅らせることになっていると、以前から警告してきました。オイル・チェンジ・インターナショナルのキャンペーナーである有馬牧子は、「日本は、AZECがアジアの脱炭素化に貢献していると主張しているが、実際には、液化天然ガス(LNG)、石炭火力発電所でのアンモニアやバイオマスの混焼、ガス火力発電所での水素混焼、炭素回収・貯留(CCS)など、化石燃料ベースの技術開発に資金を動員し、拍車をかけている。これらの技術は、ガスや石炭の使用を長引かせるだけの危険な目くらましだ」と述べました。
日本がAZECを脱炭素化のツールと位置づける一方で、この地域では膨大な再生可能エネルギーが未開発であることを指摘する批判もあります。東南アジアでは、太陽光と風力の発電能力の99%以上が未開発のままであり、2021年にはASEAN主要5カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の発電量に占める太陽光と風力の割合はわずか4%に過ぎませんでした。ASEAN自体は、この割合を2025年までに23%まで高めることを目指しています。しかし日本は、JERAや三菱重工(MHI)のような日本企業による化石燃料ベースの技術のアジアでの市場拡大を支援するためにAZECを利用することを選択しています。
「日本がGX(グリーントランスフォーメーション)戦略の下に主導しているAZEC構想は、脱炭素を標榜するグリーンウォッシュ以外の何物でもない。AZECは大企業の利益を優先し、社会的に脆弱な地域コミュニティの基本的人権を侵害する集中型電源システムを再生産するものであり、また喫緊の課題である気候危機に対処するのではなく、アジアに『誤った気候変動対策』を広めている」とFoE Japanのキャンペーナーである波多江秀枝は述べました。
専門家によれば、AZECを通じた日本の化石燃料の推進は、環境に悪影響を与えるだけでなく、すでに債務を抱えている多くの国にとって財政的な負担も増加させます。AZECが推進するガスへの移行は、不安定な価格と座礁資産につながります。インドネシア、マレーシア、フィリピンなどの国々では、アンモニアのような化石燃料ベースのエネルギー対策のコストは、太陽光や風力よりも最大4倍も高くなります。
CANオーストラリアのエリン・ライアンは、「AZECは、あらゆる面で嘘に支えられている」とし、「日本はオーストラリアに、『東京の電気を灯し続ける 』ために化石燃料ガスをもっと供給するよう働きかける一方で、実際はAZECを市場創造メカニズムとして利用し、輸入したガスをアジア全域に転売している。オーストラリア、そして関係するすべての国々は、日本の利益よりも人を優先し、AZECにサヨナラする必要がある。アジアの地域社会はすでに増加する洪水、猛暑、強まる台風、海面上昇と闘っている。日本は、エネルギー移行の頓挫によって、彼らに、そして世界に負担を掛け続けることはできない」と述べました。