今週末に日本で開催されるG7気候・エネルギー・環境大臣会合に先立ち、国際エネルギー機関(IEA)は4月13日、化石燃料ガスの見通しを含むG7エネルギーアジェンダに向けた分析を発表した。
これに対し、一部の報道では、「IEAが1.5℃目標に対応したネットゼロ・エミッション(NZE:Net Zero Emissions)のエネルギーシナリオにおいて、既存の供給で需要を十分に満たすことができるため、ガスや油田の新規開発は必要ないという従来の見解を変更した」と誤った記事を出している。しかし、G7向けに発表されたIEAの分析は、IEAが2022年の世界エネルギー見通し(WEO:World Energy Outlook )で発表したものと同じシナリオを要約し、同じ結論に達したものに過ぎない。IEAは本報告書で、「NZEシナリオでは、天然ガスの需要の減少幅は十分シナリオに整合しており、既存施設や既存の事業のみで需要を満たす」と再確認している。
加えて、IEAの分析は、G7を含む先進国におけるガス需要が、すべてのシナリオで減少することを強調している。さらに、地球温暖化を1.5℃に抑えるためには、すでに建設中の液化天然ガス(LNG)プロジェクトは稼働させず、既存のLNG設備も早期に廃止するべきだとしている。
今週末(4月15日・16日)にG7の気候・環境・エネルギー大臣らが合意する文書では、IEAが1.5℃目標に整合しないとする、新たなガス投資を支持する可能性が示唆されている。新たなガス投資を支持することは、「2022年末までに化石燃料に対する国際的な公的資金支援を廃止する」という昨年のG7公約に真っ向から反することになる。
Oil Change International リサーチ・共同ディレクター ケリー・トラウト(Kelly Trout):
「IEAの分析によって、世界が地球温暖化を1.5℃に抑え、エネルギー安全保障と普遍的なエネルギーアクセスを実現するためには、豊かな国々が先導して化石燃料ガスを迅速にフェーズアウトする必要があることが明らかになっています。気候の安定化、エネルギー安全保障、普遍的なエネルギーアクセスの鍵となる、再生可能で公正なエネルギーという解決策がある中、G7諸国が新しいガス田、LNGターミナル、またはガス火力発電所を許可または資金支援する正当な理由は一つもないのです。」
Oil Change International 国際公的資金キャンペーン担当ラウリ・ヴァンデルブルグ(Laurie van der Burg):
「G7は昨年、2022年末までに化石燃料に対する国際的な公的資金支援を終了し、代わりにクリーンエネルギーへの資金を優先させるという画期的な約束をしました。IEAの最新の分析は、1.5℃目標の達成のためには、G7がその約束を反故にし、ガスに対する新規の投融資を支援してはならないことを強調しています。G7は昨年の約束を再確認し、厳守しなければなりません。そうすることで、クリーンエネルギーへの融資を年間340億米ドルにまで増やすことができるのです。これは、気候変動目標を達成するためだけでなく、高騰するエネルギーコストを抑え、エネルギー安 全保障を向上させ、世界のガス需要の減少に伴う座礁資産化を回避するためにも重要なことなのです。」
Oil Change International アジア・プログラム・マネージャー スザンヌ・ウォン(Susanne Wong):
「G7の議長国として、日本は化石燃料の資金支援を終了し、再生可能エネルギーへの移行を支援する取り組みを主導すべきです。にもかかわらず日本は化石燃料への依存を深め、G7を日本産業の振興に利用し、気候・エネルギー危機への効果的な対処を妨げています。」
(原文) IEA report reaffirms G7 must end new gas expansion to meet 1.5ºC commitment
BY VALENTINA STACKL, BLOG POST, NEWS, PRESS RELEASES, STATEMENT
*****
注釈: 2020年から2022年にかけてのG7の化石燃料に対する公的資金の総額は少なくとも730億米ドルであり、これは同期間のクリーンエネルギーへの資金支援の2.6倍に相当します。詳しくは、オイルチェンジ・インターナショナル(OCI)の最新ブリーフィングをご覧ください: 「G7は、国際的な化石燃料への支援を終わらせるという公約を強化すれば、何十億ドルをもクリーンエネルギーに転換することができる」