バングラデシュのマタバリ地区・日本の東京・アメリカのワシントンD.C.
バングラデシュ、アメリカ、オーストラリア、日本のNGO・市民団体の連合が、9月24日をマタバリ石炭火力発電フェーズ2事業に反対する国際アクションデーとしました。
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下記リンク先にアクセスして、国際協力機構(JICA)や住友商事等の主要なステークホルダーに対し、日本による石炭事業支援に反対を表明し、バングラデシュのためにより費用対効果が高く、安全でクリーンなエネルギーの未来を支持するメッセージを送ってください。こちらから送信してください。
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日本の「汚染された」石炭火力輸出
バングラデシュのコックスバザールは、世界で最も長い砂浜の1つです。バングラデシュ人だけでなく、海外からの観光客にも愛され、海洋保護区や野生動物保護区に囲まれています。多くの漁業従事者や塩田農家がこの地域を故郷と呼んでいます。
しかし、日本政府と住友商事がマタバリ石炭火力発電フェーズ2事業に参画すれば、この価値は永久に失われてしまう可能性があります。緊急に温室効果ガスの削減が必要とされているにも関わらず、日本企業は高価で汚染度の高い石炭技術を途上国に輸出し続けています。
コックスバザールの砂浜のすぐ近くに、マタバリ島が位置しています。ここに、現在日本政府が資金を提供し、住友商事が1200MWの大規模石炭火力発電所を建設しています。
ダブルスタンダード
マタバリ石炭火力発電事業は、日本で新規発電所が満たす必要のある水準よりも緩い汚染基準に基づいた建設が計画されています。同事業は、WHOの大気質ガイドラインの水準を超える大気汚染をもたらすことになり、30年を超える発電所の運転期間を通して、数千人ものバングラデシュの住民の早期死亡をもたらすと推定されています。もし同事業が、近年の日本の発電所に相当する汚染基準に基づいて建設されると、これらの死のほとんどは回避できるでしょう。
汚染基準の問題は、私たちが目にしている唯一の偽善ではありません。COVID-19の渦中において、住友商事は東京を拠点とする従業員に対しては在宅勤務を行うよう指示していた一方で、バングラデシュでは、政府のロックダウン措置に違反して、請負業者が3000人の労働者に対し発電所の建設作業を継続させていました。
バングラデシュの方々の命・生活に関して言えば、明らかに、ダブルスタンダードが存在します。
悪化するマタバリフェーズ2事業
マタバリフェーズ1事業が予算を超えて計画よりも遅れているにも関わらず、2020年6月、日本の外務省は、新たに1200MWの石炭火力発電所(マタバリフェーズ2)の協力準備調査の実施を決定しました。マタバリフェーズ2事業はおそらく、大気汚染と温室効果ガスの排出を倍増させるでしょう。
バングラデシュではすでに電力供給力が過剰となっており、主要な電力会社は赤字となっています。バングラデシュ及びその他の国の44の市民団体が要請書を送付し、日本の首相に対し、フェーズ2事業への公的支援を行わないよう求めました。しかし、日本政府は依然計画を押し進めています。
進行中の気候災害
低地であるバングラデシュは、気候変動によって悪化する洪水に脆弱です。もし、マタバリ石炭火力発電所が建設されれば、これらは間もなく、海面上昇とより強力なサイクロンの重大な原因となるでしょう。バングラデシュは、気候変動から深刻な影響を受ける国々で構成されている気候脆弱性フォーラムの議長を務めています。世界全体で、2040年までに石炭火力発電所を廃止することが求められており、マタバリ事業のような新規の石炭火力発電所を建設する余地はありません。新規石炭火力発電所は1度建設されると、数十年間にわたり運転されることになります。
クリーンな代替エネルギーの準備はできている
バングラデシュがクリーンで再生可能なエネルギーへ移行する未来を支援するために、日本政府と日本企業は技術的専門知識を活用することができるはずです。ある分析によると、バングラデシュにおいて太陽光発電はクリーンであるだけではなく、石炭火力発電よりもはるかに安価であることが判明しました。太陽光発電の均等化発電原価は、マタバリ石炭火力発電フェーズ1事業によって発電される電力よりも、キロワット時あたり48%以上安いと推定されています。バングラデシュの電気利用者は、自国に太陽光発電の大きなポテンシャルがある中、高い電力コストに悩まされるべきではありません。
Bangladesh Working Group on External Debt (BWGED) の代表である Hasan Mehediは、「附属書I国として、日本は自国の温室効果ガスの排出量を大幅に削減する必要があります。しかし日本は、バングラデシュを含む、世界で最も脆弱な国々のいくつかに汚染を押し付けています。バングラデシュには、再生可能エネルギーで250GWを発電するのに十分な資源があります。技術的先進国である日本は、マタバリ石炭火力発電事業への融資を停止し、バングラデシュで100%再生可能エネルギーを確保するために追加的な融資をする必要があります」と述べています。
日本と住友商事が方向転換する時
今から変更するのは遅くありません。マタバリフェーズ2事業はまだ計画段階にあり、日本では菅首相が新しく政権を引き継いだばかりなので、世界の気候危機とバングラデシュの状況の変化に対処する緊急性の高まりを認識し、同事業が不要であることを理解する機会はあります。
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)のプログラム・ディレクターである田辺有輝は、「2020年7月に日本政府は海外石炭火力支援方針を改訂し、原則として公的支援をしないことを決定しました。しかし、マタバリフェーズ2事業を含む、すでに進行中のプロジェクトは新方針の対象外となっています。マタバリフェーズ2事業は、プロジェクトの初期段階にあるので、まだ引き返せる可能性があります」と述べています。
マイティー・アースの日本プロジェクト統括マネージャーの Roger Smith は、「住友商事は、マタバリフェーズ2事業に関与しないことを発表するべきです。6月に、同社は株主に対して2050年までにカーボンニュートラル化を達成し、世界の排出削減に貢献すると述べました。しかし実際には、住友商事は新規石炭火力発電所を建設することで問題を悪化させています」と述べています。
Market Forces のエネルギーファイナンスキャンペーナーの Meg Fukuzawaは、「パリ協定の気候目標を達成するためには、バングラデシュと国際社会は、住友商事による新規石炭火力発電所建設を許容することはできません。住友商事はマタバリ石炭火力発電事業を建設するのではなく、石炭事業への関与を排除し、バングラデシュのエネルギー需要を満たすために、より多くの再生可能エネルギーに融資すべきです」と述べています。
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日本のマタバリ石炭火力発電事業に反対し、バングラデシュのクリーンなエネルギーの未来を支持するためにメッセージを送ってください。こちらから送信してください。
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支援団体:マイティー・アース(アメリカ)、Bangladesh Working Group on External Debt (BWGED)(バングラデシュ)、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)(日本)、Market Forces(オーストラリア)