2022年4⽉20⽇付の投資家向け説明資料に続き、350.org Japan、マーケット・フォース、レインフォレスト・アクション・ネットワーク、ならびに気候ネットワーク(「共同提案者」)は、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)による気候変動⽅針に関する新たな発表と、株主提案への取締役会の意⾒を受け、本追加資料を発⾏します。
SMBCグループから新しい気候⽅針および取締役会の意⾒が出されましたが、株主提案の核⼼に対応していません。短期・中期の温室効果ガス(GHG)排出削減⽬標が開⽰されておらず、また国際エネルギー機関(IEA)の「2050年ネットゼロ排出シナリオ(NZE2050)」で要請されている、 新規の化⽯燃料供給やそれに伴うインフラ拡張への投融資を⾏わないことを確実にするための、有意義な対策も開⽰されませんでした。
従いまして、以下に明⽰しました理由から、私たち共同提案者は本株主提案を維持することとします。投資家の皆様には、6⽉29⽇に開催されるSMBCグループの定時株主総会において、本株主提案に賛成票を投じていただくようお願い申し上げます。
1. 新たな排出削減⽬標は不適切で不⼗分
パリ協定の⽬標を達成するには、温室効果ガス(GHG) 絶対量の削減⽬標が必要なことは、SMBCグループ⾃⾝も認めています。にもかかわらず、電⼒セクターにおける排出量の削減⽬標について、同社は炭素強度の⽬標(2030年削減⽬標:138〜195gCO2e/kWh)しか公表していません。この⽬標下では、化⽯燃料による発電への投融資を拡⼤し、それに伴うGHGの絶対量が増加した場合でも、⽬標達成が可能なため、ネットゼロに向けた道筋と⽭盾することになります。さらに、この⽬標は融資額のみを対象としており、投資・引受は対象外となっています。「2050年までに投融資ポートフォリオ全体で」排出ネットゼロを達成するという同社のコミットメントと整合させるためには、あらゆる⽬標は、その対象範囲を投融資ポートフォリオ全体とする必要があります。
またSMBCグループは、エネルギーセクター(⽯炭、⽯油・ガス)における2030年の排出削減⽬標を、2022年8⽉に公表すると約束しています。ただし、これらの⽬標の範囲は「上流⽣産事業」に限定されると⾒られます。つまり、IEAがNZE2050シナリオで強調した、LNGターミナルなどの上流事業に付随する化⽯燃料インフラは、8⽉に公表予定の同社の⽬標に含まれないことになります。
2. 新⽅針は、SMBCグループが新規の化⽯燃料供給への投融資を⾏わないことを確実にする、有意義な対策について説明が不⼗分
IEAのNZE2050シナリオは、「炭鉱の新規開発や拡張は必要ない」と、新規の化⽯燃料供給事業の開発余地がないことを明確にしています。2022年5⽉に発表されたSMBCグループの新⽅針では、⼀般炭採掘事業の新規および拡張案件への⽀援は⾏わないことを明記しています。ただし、炭鉱への投融資の⼤半を占める、⼀般炭の新規採掘や拡張事業を推進する企業へのコーポレートファイナンスについては、明確な規定がありません。SMBCグループの直近の融資実績には下記が含まれます。
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アダロ・エナジー・インドネシア社に7億1,300万⽶ドルの融資(2021年の4億⽶ドルの融資参加を含む、2006〜2021年までの融資)。炭鉱からの収益が96%を占める巨⼤⽯炭会社、アダロは、現⾏の年間あたり5,000万トンを上回る⽣産量を増産する意向を表明。
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オーストラリアのホワイトヘイブン・コール社に1億1,500万豪ドルの融資(2020年)。同社は、およそ5,000万トンの埋蔵量がある炭鉱の新規開発および拡張事業3件に、約20億豪ドル(約14億⽶ドル)を投じることを計画中。
SMBCグループの新⽅針では、⽯炭採掘拡張を計画中のこれら企業への融資を制限していません。2022年7⽉に予定されている、アダロ⼦会社へのリファイナンスを通じた同社への融資を更新するかどうかが、SMBCグループのサステナビリティへの取り組みを判断する重要な試⾦⽯となります。
またIEAのNZE2050は、「2021年時点でコミットされた事業を除き、(ネットゼロ)経路では⽯油・ガス⽥の新規開発は承認されるべきではない」と明記しています。SMBCグループの当該セクターへのエクスポージャーの度合いは⾼いにもかかわらず、新⽅針では本件に関する取り組みへの⾔及はありません。SMBCグループは、液化天然ガス(LNG)セクターへの資⾦提供で世界第4位、北極圏の⽯油・ガスへの資⾦提供で世界8位と邦銀他⾏より上位に ランクインしています。海外銀⾏と⽐較すると、例えばオランダのINGは、すでに新規の在来型⽯油およびガスの上流事業への資⾦提供の打ち切りを表明しています 。さらに複数の保険会社も、新規の⽯油・ガス上流事業への引受を除外する⽅針を導⼊しています。
3. SMBCグループの改定⽅針でも邦銀他⾏に届かず
下記に⽰す邦銀他⾏の⽅針は、SMBCグループの⽅針と⽐べ、気候リスクをより明確に管理しています。これらは2022年4⽉と5⽉に改定された各銀⾏の⽅針を反映しています。
4. 株主提案に対する取締役会による反論は、内容ではなく、形式を重視
SMBCグループは、本株主提案に対する取締役会の意⾒を公表しましたが、その焦点は、このような株主提案の形式として定款変更が適切かどうかに重点を置いたものです。しかし、同意⾒は、気候関連の株主提案が⽇本の会社法を理由に却下されることを回避する唯⼀の法的⼿段が定款変更であること、また本株主提案は⽇本の会社法に規定されている取締役および取締役会の経営判断における裁量権を何ら制限するものではないことを考慮していません。これら株主提案の法的効⼒は、バークレイズやBP、ロイヤル・ダッチ・シェル、リオ・ティント、アングロ・アメリカンを含む英国企業に提出され、可決された気候変動関連の「特別決議」と同じであり、定款の⼀部となることで拘束⼒を持つようになります。
さらに、SMBCグループ⾃らが述べているとおり、気候対策に「真摯に」取り組んでいるのであれば、なおさら、今回の株主提案を定款に盛り込むことを拒否する理由はないはずです。
以上の理由により、SMBCグループが⻑期的に企業価値を維持し、向上させていけるよう、投資家の皆様には、6⽉29⽇に開催される同社の定時株主総会において、本株主提案に賛成票を投じていただくよう重ねてお願い申し上げます。
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